八正道③「正語」について(後編)
前編をまだお読みでない方は、こちらから先にお読み下さいね。
「正語」とは
どんなことに気をつけるのか?
悪口/不悪口「やさしい言葉を語る」
正語の③番目は「やさしい言葉をつかう」という事です。
世間には荒々しい言葉を使う人がたくさんいますよね。
普段は温厚な人でも、感情が高ぶった時などには、荒々しい言葉が出てくる時があります。
しかしおしゃかさまはどんな時でも「荒々しい言葉をつかうのを止めなさい」と言っているのです。
おしゃかさまは経典の中で
人は生まれながらにして、
『8マインドフル・ステップス』バンテ・H・グラタナ著 出村佳子訳 サンガ出版 p143
口の中に斧を持っている。
愚か者は悪口を言っては、
自分を斬り、他人を斬る。
(スッタニパータ六五七)
と、おっしゃっています。
おしゃかさまは「荒々しい言葉は斧のようなもので、その斧は他人だけではなく、自分をも切っているのだ」と、おっしゃっています。
荒々しい言葉を使えば、荒々しい言葉を使う人が集まってきます。
穏やかに生きる為には「穏やかな言葉を使う」事が自分を救う事にもなるようです。
綺語/不綺語「無駄話をしない」
正語の④番目は「無駄話をしない」という事です。
特におしゃかさまは「解脱(悟り)を勧めている立場」なので、よけいに「何の役にも立たない話をしている時間が、人生においてはとても無駄である事」を伝えたいのだと思います。
これに関しては、優秀なビジネスマンさんや経営者さん、プロのアスリートさん達でも同じ事をおっしゃるのではないでしょうか。
世間においては「無駄話」をする時間もコミュニケーションの為には必要であろうと思います。
しかし、そのような時間ばかりでは「心の成長」は望めません。
これは「会話の中にジョークは必要ない。」「真面目な話ばかりしていなさい」という話ではないんですよ。
心の成長を促す話であっても、楽しくジョークを交えて話す事はできます。
優秀なビジネスマンさんや経営者さん、プロのアスリートさん達も全く「無駄話」をしていない訳では無いと思うのです。世間話もされると思います。
しかし、すぐに有益な話に切り替えるだろうし、そうした会話が続きそうだと「この時間は無駄だな」と感じて早々に離れていこうとされると思うのです。
無駄話を好む人には好む人が集まってきますし、無駄話を避ける人には避ける人が集まってきます。
無駄話を続ける為には「妄語」「両舌(りょうぜつ)離間語(りかんご)」「悪口 (あっく)粗悪語(そあくご)」といった「燃料」が必要になってきます。
結局、無駄話を続ける時間は「悪い言葉を生む確立を、自ら上げてしまっている」事になるのですね……。
言葉による苦しみから離れる為にも「無駄話をなるべく避ける」というチャレンジをしてみて欲しいと思うのです。
沈黙する。
会話に関する最大の謹みは「沈黙すること」です。
「沈黙する事に慣れること」と、いえるかもしれません。
マウントをとろうとして……。
私たちはつい、会話の中で「相手によく見られよう」としちゃいますよね。
その結果「相手よりマウントをとろう」とか「相手を言い負かそう」として、会話中に「焦り」「怒り」「不安」が生まれてしまうことになります
そんな状態だからこそ、会話の中に「妄語・両舌・悪口 」が生まれてしまうのではないでしょうか……。
そして、そんな会話の状態を、綺語(無駄話)というのではないかと私は思います。
会話の流れを読む為の沈黙……。
この「沈黙を守る」という教えには、本当の事を言うのにも「適切な時を読む」という意味もあります。
本当の事なら「何でも、いつでも言って良い」という事はありませんからね(笑)
日々の会話を上手に進めていく為にも、基本の形を「沈黙」としておけば、冷静に状況をよく読み、適切な会話が「選べる」ようになるのではないでしょうか。
話す事は結構快感……。
沈黙って「無表情でいる事ですか?」って聞いてくる方がいるんですが、無表情じゃなくていいです(笑)
むしろ、無駄に争わないためにも、ニコニコしている方が賢明ではないでしょうか。
大事な事は「話したい」という衝動に振り回されない事なんです。
「話をすること」って、結構「快感」でもありますからね……。
だからこそ「興奮して」余計なことをいっちゃったり、より気持ちよくなるために「相手を言い負かそう」としちゃうのでしょうね……。
「沈黙を守る」というのは、結果「冷静に状況を確認する」という事にもなります。
「よけいな事を話さない」ようにするコツですね。
まとめ
如何でしたでしょうか。
この話のポイントは二つ。
「正語」についてのこの話も、ただ「幸せになる為に、よい言葉を選んで話ましょう」っていうだけでは「確かにそうだから、いますぐ実行しなきゃ」とはならないと思うんですよね。
なぜなら(嘘を言わない事とか)実際に出来てはいないんだけれども、当たり前の話過ぎて、早急に「実行し始めなくてはいけない」って事には思えないからです。
この話のポイントは
①「会話は反応(自動的)だから、自分の心を観察して、話す言葉を気をつけていかないと、これから先も、自動的に、よくない反応(コミュニケーション)しか生んでいかないよ!」
という事と、
②「会話する事は「快感」でもあるので「冷静さ」を保たないと、興奮して余計なことしゃべっちゃうよ!」
って所だと思うのです。
この二つです。
人徳がある人。
そして「沈黙」によって会話の状況を冷静に把握しながら、自分の感情に流されず、よい言葉を使う「訓練」をしていく事で、自然と「人格」が形成されていくと思うのです。
「人徳がある人」って、自然な姿がすでに美しいですよね。
私たちは「自然」にしていると「心のなかにある感情に振り回された言動を自動的にしちゃう」んです。
心の中に「怒り」があれば、それに伴った言動を。
心の中に「悲しみ」があれば、それに伴った言動を。
心の中に「慈しみ」があれば、それに伴った言動を。
ここが本当にポイントだと思うんです。(先ほどの①ですね)
故に、慣れるまでは「訓練」なんです。
訓練だと思って、冷静に、使う言葉に気をつけていけば、おのずと心も浄化されていき、自然に出てくる言動も美しくなってきます。(先ほどの②ですね)
このおしゃかさまの「正語」の教えを「自分を救う方法だ」と思って参考にして頂き、楽しく実行していって下さったらと思うのです。
生きとし生けるものが幸せでありますように。
くてい拝