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お悩み相談ブログ「いい距離間」の話。(前編)

kutei

みなさんこんにちは。

僧侶のくていです。

私はお坊さんとして、(ネット上では行っていませんが)日常の悩み相談を受ける事もあります。

今日は、私がいままでお受けしたカウンセリングの中から「いい距離間」というお話をさせて頂きたいと思います。

この話が、同じように悩んでいらっしゃる方の助けになったらと思います。

こんな方に読んで欲しい。
  • 今、人間関係に悩んでおられる方。
  • ~べき、という人間関係に苦しんでおられる方。

人間関係の収まり処

Mさん

Mさん(女性:30歳)の両親は、Mさんが小学校の低学年の頃に離婚したそうです。

Mさんはお母さんに引き取られ、数年後、お母さんは再婚しました。

新しい、義理のお父さん(以下、お義父さん)は、普段はやさしく、面倒見のいい人でしたが、お酒が入ると暴れたり暴言を吐いたりと……ちょっと困った人だったようです。

Mさんは、将来自分のカフェを経営するために、20歳の頃から、いくつものカフェで修行をして、30歳には自分のお店を持つ準備が出来ました。

Mさんは28歳の時に、お店を開きたいという気持ちをお義父さんに相談したそうです。

すると、すこし酔っ払っていたお義父さんは、

「お店を持っても良いから、オレの為に車を買ってこい。そしたら許してやる」

といったそうです。

それを聞いたお母さんは激怒しました。

「酔っ払っているとはいえ、自分の娘がやりたいと言っている事に応援もできないなんて……」

そんな事もあって(その他、いろいろな理由も重なって)、お母さんとお義父さんは離婚。

その後、Mさんは無事お店を開き、1年後にはお店は大成功していました。

元々、友人でもあったMさんから相談を受けたのは、ちょうどそんな頃でした……。

どちらも苦しい……。

その頃、お店を大成功させていたMさんは、忙しいなからも日々、穏やかに過ごしていました。

しかし、数日前、いつもより1時間早くお店のシャッターを開けにお店に向かうと、なんと段ボール箱を持った、お義父さんがシャッターの前にいたというのです。

Mさんはビックリして「お義父さん、どうしたの?」と聞きました。

すると、お義父さんは持っていた段ボール箱をMさんに渡し、

「押し入れの整頓をしていたら、オマエの写真がたくさん出てきたから、シャッターの前に置いて帰ろうとしたんだ……」

そういってMさんに段ボールを渡すと、独り、背中を向けてトボトボと帰っていったそうです……。

その背中がとても寂しそうに感じたんだとか……。

そんなお義父さんの姿を観て、Mさんは、

「なんだかんだ言っても、私を育ててくれたのはお義父さんで、お世話にもなってきたし、これからお義父さんも一人で生きていくのかと思うとなんだか哀しくて……。」

「いまならお義父さんに、車だって買ってあげられる。でも、今、買ってしまったら、また(ちょっと困ったお義父さんとの)『繋がり』が生まれてしまう……。それを拒否したい自分もいる……。わたしはどうしたらいいのか分からなくて……」

そう言ってMさんは涙を流していました……。

う~ん、みなさんなら何とアドバイスをされるでしょうか……?

形は違えど、同じような問題に悩んでいる方ってたくさんいらっしゃると思うんですよね……。

道徳の話

こうした話をすると、中には「どんな親でも親には違いないんだから、お世話をして当たり前じゃないか」と言う方もいらっしゃいます。

実際に、宗教や道徳の世界でも「親孝行をする事の大切さ」を教えています。

「受けた恩に報いる」という事は、人として当たり前の事のように感じます。

当然、そのような事を、Mさんも感じているからこそ、現状に悩んでいる訳ですよね……。

傷ついた側だからこそ選べない事……。

私がカウンセリングをさせて頂いた中に、幼少期、父親から虐待を受けて、大人になった今でも親からの支配に苦しんでいるBさんという人います。

Bさんは私に、自分が受けてきた虐待の話をしてくれました。

そのうえで「親孝行はしなくちゃいけない、なんて、それはちゃんと親が愛してくれた家庭の話です。私は親の介護なんて、とうてい考えられない」と言っていました。

私も話を聞いて「そりゃあ、そうだろうな……。」と思いました。

ただこの話のポイントは、そんな虐待を受けて苦しんできたBさんでさえも、どこかで「親と和解したい」とは思っているんだろうな、という所です。

近くにいけば罵られ、傷つく事は分かっていても、Bさんは父親に近づいていきます……。

本当は「分かち合いたいし、愛したいし愛されたい」んだと思います……。

何か父親に頼まれると、嫌とはいえず(恐怖からの支配もあるのでしょうが)、近づいて行き、又、傷ついて帰ってくる……。(現在、は違いますが、以前は同じ市内に離れて生活していました)

親の機嫌を伺い、またそんな自分を息苦しく感じている……。

Bさんも、どこかで「なんだかんだいっても親だからな……」という気持ちがあるからこそ、「困ったお父さん」でもほおっておけないようです……。

だからこそ苦しいんでしょうね……。

良い距離感……。

Mさんの話に戻ります。

私はこの時Mさんに「それって、いい事なんじゃないのかな?」と言いました。

下を向いていたMさんは「えっ⁈」と、言って驚いた顔を私に向けました。

「Mさん、それってさ、ちょっとした事にも感謝できるくらい今、『いい距離感』って事なんじゃないかな……。」

そう言って私はMさんに、ヤマアラシのジレンマ」の話をさせて頂きました。

ヤマアラシのジレンマの話

ヤマアラシのジレンマ」とは、体にトゲをもった二匹のヤマアラシが、親しくなりたくて(または寒さを凌ぎたくて)近づきたいんだけれど、近づき過ぎるとお互いのトゲで傷つけあってしまう。離れてしまうとさみしい(寒くて凍えてしまう)という「相手に近づきたいけれど、傷つきたくない」という心理についての例え話です。

まさしくMさんも「ヤマアラシのジレンマ」状態ですよね……。

心理療法における体感

心理療法では、体を使って体感するワークが結構あります。

ロールプレイやファミリーコンステレーションという技法では「自分が問題としている対象(例えば父や恋人など)」を参加者の誰かに「役割」として立ってもらって、その関係性の中で生まれる「力動」の観察をしたりします。

こうしたワークで面白いのは「人間関係には適切な距離感がある」という事が「体感として」分かる、という所です。

例えばムスメであるあなたには「暴力的でキライだけれど、本当は愛してほしかったお父さん」がいたとします。

ロールプレイというワークなら、ムスメであるあなたは「代役」であるお父さんを立てて、その(代役のお父さんに)近づこうとするワークをします。

しかし「代役のおとうさん」であっても、近づこうとすると体に「拒否反応」が出てくるんですよ。

時には一歩も近づけない事さえあります。

逆に「自分にとってよい距離まで移動してもいいですよ」というと、随分離れた所まで行って本当に心が「楽に」なったりするんです。

これは体験するとビックリします。

こうした体験からも「人と人には適切な距離感があるんだな」って、私は感じているのです。

                                 後編に続く……。

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まやば くてい
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僧侶・カウンセラー
仏教が取り扱う範囲って結構ひろいです。私はこのサイトを通じて、これから仏教を学ぼう、という方に、まずは広い目で「仏教や、宗教のできた土台」を学んで頂き、そののちに興味の方向にあわせて学びを深めていく事の、お手伝いができたら良いな、と思っているんです。
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